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春。
桜の花びらがひらひらと舞う校舎前からそよいできた風が、俺の教室のカーテンを揺らす。
その緩やかな気候を肌で感じながら。
教壇前で、担任から一枚の紙切れを受けとった俺の手が僅かに震える。
手中の用紙に印刷された番号を何度も見直し席につくと、素早くスマホを操作した。
「寛貴、何組だったー?」
ひとつ前の席から体を捩り、俺に話しかけるミツを軽く無視して文字を打ち込みメール送信。
「あっ!また1組じゃーん!俺もよー?」
俺の机に置かれた新クラスの番号を勝手に覗き見、喜ぶミツ。
が、そんな親友に構ってられないほど……今、俺の心臓はドキドキと脈打っていた。
点けては暗くなるスマホの画面をそわそわと見つめながら、あいつからの返信を待つ。
「なにー?霧島ちゃんにメールしてんのー?」
その言葉に目線だけ上げると、にんまりと俺に微笑みかける悪友の姿。
そのまま目を細め、睨み付けた瞬間。
手の中のスマホがブルッと震えた。
跳ね上がる心臓。
ごくりとひとつ唾を飲み込み、受信したメールを開く。
『オレも1組。』
っ!!
「っしゃ!!」
思わず漏れる、感嘆の声。
「なになにー?霧島ちゃんも1組ー?」
身を乗り出して聞いてくるミツに「おー」と平静を装い返答するも。
……やばい。
顔が緩んで仕方ねーわ。
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