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霧島の言動に目をパチパチとしばたかせる俺。
「え?家に原付あったって……」
いまだに霧島が迎えに来てくれた理由にたどり着けないでいると、わかりやすくヒントをくれるあいつ。
「……歩いて帰るつもりだった?おまえの足だと一時間かかるぞ。」
「!!」
そこまで言われてやっと思い出す。
そうだ!俺……。
今日寝坊してミツに送ってもらったから足ないじゃん!!
いつの間にかすっかり抜け落ちていた事実に漏れる自嘲。
ポリポリと誤魔化すように頭を掻いて、あいつを見上げる。
「……てか、歩いて帰っても一時間もかかんねーし!!」
今さっき言い渡された小馬鹿にするような見立てについて反論すると、「そうか?」と目許を細めるあいつ。
こんなたわいもないやり取りさえも、今の俺には久々に感じて……。
嬉しいという気持ちを抑えきれずに頬を緩めまくっていると、そんな俺を現実に引き戻すようにもう一度あいつが尋ねてきた。
「……で?仕事いつ終わんの?まだかかる?」
「…………あ。」
俺の勤務が18時までだという前提で話されて、一気に沸き上がってきた申し訳なさが頭を占める。
「ごめん、俺。今日、8時までになった。……バイトに欠員出て、その穴埋めで。」
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