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言いながら、ズーンと沈んでいく心。
ついさっき、仕事だからって気合いを入れたところなのに。
霧島を目の前にしたら、あいつの方へ行きたくて仕方なくて。
その要求を封じ込めるように視線を外してうつ向いていると、俺の頭部にぽんぽんと手が乗った。
「なら、時間まで中で待ってるから。案内して?席。」
バッと顔を上げると、俺の心中を見透かすように微笑むあいつ。
「けど……2時間も待ってたら、お前暇じゃん。一旦帰った方がいいんじゃねーの?」
ここにいて欲しいくせに、あいつの気持ちを確かめるようなことを、わざと言ってみたり……。
あー、俺。
マジで愛情が、不足してる。
限りなく女々しい自分にうんざりしながらも、あいつの返事を待っていると、俺の望む言葉が、そのまま耳に届いた。
「いいよ、ここで待ってる。おまえが働いてるとこ、見たいし。」
クシャクシャと前髪を弄られながら、そう言われて。
その触れられた部分から熱くなって、あいつの愛情を試そうとした自分に、ぎゅっと胸が縮む。
霧島の方が疲れてるハズなのに、俺が今どうしてほしいか……俺の願望全て汲んでくれるあいつの態度に、泣きそうになる。
……ごめん、俺。
こんなんで……。
そう心の中で謝罪して、慌ててメニュー表を掴み取ると、足早にテーブル席へと案内した。
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