5 years later

24/114
前へ
/1072ページ
次へ
釈然としないまま、成果を上げられずに返ってきてしまったメニュー表にしぶしぶ手をかけたところで、漸くあいつの唇がその理由を述べてきた。 「オレ……。帰っておまえの手料理、食べたいから。」 「…………。」 ぽかんと顔を上げる俺の瞳に、片手を頬について見上げてくるあいつの姿が映る。 少し意地悪げな表情。 でも、その眼差しは……ドキッとするくらい優しくて。 そんな顔で見つめてこられたら。 頭を占めていた邪な願望も一瞬で吹っ飛んで。 お前が望むならメシでも何でも作ってやりたいって。 掃除も洗濯も全部やっても苦じゃないって、思ってしまう。 ……家政婦、じゃねーし。 好きだから。あいつの喜ぶ顔が見たいだけだし。 「……な、なるべく、8時ちょうどに上がれるようにするから。」 待っててと見返すと、カタンと席を立つあいつ。 「頑張れよ」ともう一度俺の頭に触れてから、ドリンクバーの設置場所へと遠ざかっていった。
/1072ページ

最初のコメントを投稿しよう!

516人が本棚に入れています
本棚に追加