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ブーンと音をたてて回転する換気扇の下、ジャッジャッと肉と野菜の焼ける音がする。
中華味の粉末を振りかけて塩コショウで味を整えた後、カチリとコンロの火を落とす。
ふたり分の食器にそれぞれこんもりと盛り付けて、両手に熱々の皿を掴むと、リビングで待つあいつの元へいそいそと運び込んだ。
本日の晩飯という名の夜食。
肉野菜炒めと豆腐とワカメの味噌汁に、白飯……以上!
大学に入ってから5年間、毎日自炊してきてるとは言え、俺、料理得意じゃねーし。
そんなに品数も作れないから、大概一品一品の量を多めにした2品に収まる。
「ごめん。買い物行く時間なくて、こんなんで。」
久々に一緒に食べる食事なのに、冷蔵庫の残り物で作ってしまったのが丸分かりの品目に、頭を下げる俺。
結局午後8時に終わる予定だった俺の勤務は、いつものようにずれ込んで、現在夜の9時半を回ったところ。
当然買い物に行く時間もなくて、豪華さの欠片もない残念な仕上がりになってしまった。
「なんで?これで十分だけど?」
3時間もファミレスで待たせたのに、貧相な食事に文句も言わずに「いただきます」と手を合わせるあいつ。
バスケ選手なんだから、ホントはもっと栄養面とか1日何十品目とか、色々気をつけてやらなきゃ駄目なんだろうけど。
今の俺は、とりあえずの飯を作るだけで手一杯で、そこまでの余裕がない。
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