516人が本棚に入れています
本棚に追加
食事を担当する身としての不甲斐なさを憂いながら、自分も白飯の盛られた茶碗を持ち上げたところで、正面から漏れてくる笑い声。
「……人参、結構な固さ。」
「………………。」
クククと苦笑されて、一層バツが悪くなる。
急いで作りすぎて、火の通りが甘かったらしい。
……まぁ、これも。
よくある出来事。
「どうだった?井伊と佐々木の結婚式。」
固い人参もすべて平らげた後、麦茶を啜りながら俺に視線を寄越すあいつ。
「んー、よかったよ。……あ、写真見る?」
昨日必死になって撮りまくったデジカメを渡すと、データを再生した直後、あいつの口が堪えきれない笑いを吹き出す。
「……おまえ。カメラのセンス、さすがだな。」
ニヤニヤと嫌みを言われて、じとっと目を細めて対抗する。
「ちゃんと撮れてるのもあるっつーの!ちょっと貸せ!!」
ローテーブルを挟んだ正面から、あいつの真横へ移動すると、無理矢理カメラを奪ってコマ送りを連打する。
「これ」と一枚だけ撮れた奇跡の写真を突き出すと、柔らかな表情で液晶画面を見つめるあいつ。
「へぇ……。佐々木、綺麗になったじゃん。井伊は変わらないな。」
最初のコメントを投稿しよう!