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ガシガシと腕が吊りそうなスピードでタオルを動かし、入浴を終えた髪の水分を拭っていく。
多少の水滴は気にも止めずに部屋着を身につけると、いざあいつのいるキッチンへ。
バッと勢いよく洗面室の扉を押し開けたところで、静まり返る台所兼用の廊下。
まだあいつが立っているだろうとタカをくくっていたキッチンには、既にその姿はなく、代わりに俺を待っていたのは水切り台に並ぶ洗浄を終えた食器たちで。
その光景を目の当たりにした瞬間、嫌な予感がMAXで働く。
恐る恐る誰もいないリビングを通過し、寝室へと続く扉を潜り抜けると、真正面のダブルベッドに横たわる人影。
「……寝てるじゃん。」
予感的中の事態に、大きく息をついて脱力する。
……つーか、どんだけ皿洗うの早いの?お前。
実は俺が家事するより霧島がやった方が何もかも効率いいんじゃ……?という疑念を抱きながら、一歩一歩ベッドへと足を運ぶと、そこで気づくあいつの不自然な寝方。
すやすやと寝息をたてるあいつは、上半身こそベッドに着地しているものの、その長い両足はベッドサイドから投げ出されたままになっていて。
あー、これ。
一応俺のこと、待っててくれてたのかな?
座って待ってたけど眠気に勝てずに結局、寝落ちてしまった……ってとこ?
あいつの体勢から導き出される可能性に、萎み切っていた心がゆっくりと膨らみ始める。
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