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俺は詩織の肩に両腕をまわしたまま、詩織の顔を見た。
「コウちゃん、謝らんといけんのは私の方や。私な、コウちゃんのことほんまに好き。もう、どうしたらええか分からんくらい好きや。やから、馬鹿なことした……ごめんな。でも、私、大丈夫やから。コウちゃん、歌、頑張って……」
「なんでお前が謝るんじゃ」
もう、我慢できない。
俺の頬をなでている詩織の華奢な手が、少しずつ濡れていく。
「俺、お前がおらんとダメじゃ」
俺のダメなところを全部受け入れてくれる人。
「もう、逃げんから。これからは俺が、お前のこと支える」
この世界のどこを探しても、きっと、詩織以上に俺を想ってくれる女なんかいないだろう。
「一生、ずっと」
その言葉を口にしたとき、不思議と涙が止まった。代わりに詩織の目から零れ落ちる。
「ずっと?」
俺は詩織みたいに手で拭ってやることができないから、代わりに詩織の頬にキスをした。
なぜか、あまり辛(から)くない。
そのまま、もう一度詩織を抱きしめて頷いた。
「ああ」
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