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――アマガエルだった。
つるんとした、緑の肌。
くりんとした、黒の瞳。
ぽてんとした、腹。
不気味と言えば不気味だが、むしろ、愛嬌があって可愛いらしい。
せめて毒々しい色だとか、イボだらけとかだったら、迫力も出ただろうに。
「おまえら、なんだケロ。この先の泉は、俺様の物ケロ~」
微妙に高い声が、さらに闘志を削ぐ。
「……よし。ここは勇者の腕の見せ所だ」
と、アークがリックの肩を叩く。
「そんな、アークまでっ。……もう、仕方ないなあ」
とはいえ、珍しく回って来た出番だ。
リックは気合いを入れて構え直し、カエルに切りかかる。
「とおっ」
しかし、振りかぶった剣はビヨーンと、伸びてきたカエルの舌に絡め取られた。
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