永遠のさよなら

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「何、面食らった顔してるんだ。早く聴取しろよ」 「俺が……山上先輩を、聴取?」 「お前を残して、先に死んだ僕だから。理由、知りたくないか?」  切れ長の一重まぶたを細め、愛おしそうに俺を見つめてきた彼に対して、何と答えていいか分からなかった。  今更理由を知ったところで、山上先輩が生き返るわけがない。ひとつだけ言えるのは、あのとき失った大好きな人の喪失感を、再び味わうだけなんだ。 「……僕の、水野――」  言いながら立ち上がり、伸ばしてきた左腕。その薬指には、俺が噛んで付けたエンゲージリングの痕が、そのままだった。  それに気がついた瞬間、慌てて左手を背中に隠す。俺の薬指には、翼が買ってくれたシルバーのリングが嵌めてあったから。きっと山上先輩は、気分を害してしまう―― 「こんなに近くにいるのに、水野に触れられないなんて」  左腕を伸ばしたまま、そこから動こうとしないで、切なげにポツリと呟く。 「山上先輩?」 「死んで、はじめて気づくことがある。生きてる水野に、僕は触れられないんだ」  それって俺も、山上先輩に触れられないってことなのかな?  恐るおそる綺麗なカーブを描いた頬に、右手をそっと伸ばしてみた。肌に触れたと思った瞬間に、山上先輩の顔を突き抜けてしまう自分の手に驚いて、慌てて引っ込める。 「バカだな、お前は。わざわざ確かめることないのに」 「だって……」 「それに、左手を隠す必要はない。知ってるから、さ。水野を大切に想ってるヤツから貰った、指輪を嵌めてるだろ?」  笑いながら告げた貴方の顔を、俺は直視出来なくて俯いてしまった。だって笑いながら告げているのに、今にも泣き出しそうな顔に見えたんだ。  どんな気持ちで、指輪のことを言ったんだよ……  背中に隠していた左腕を、力なくぶらんと体の脇に下した。それでも指輪が見えないように、ちゃっかり配慮する。 「……そんな顔して俯くなよ。こうして顔を付き合わせられるのは、これが最後になるんだから」 「えっ?」 「お前の顔を、しっかり見せてくれ。水野の綺麗な瞳で、僕を見てほしい」
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