ラストファイル3:伝家の宝刀

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 白い息を吐きながら、いつものように山上家のお墓を、丁寧に掃除していく。御影石にキズがつかないよう、細心の注意を払いながらスポンジで擦り、初夢の話や取調室での永遠の別れのことを、山上先輩に報告していた。 「初夢の話は、現代の山上先輩じゃなかったから、大きな事件が起きなかったのは分かるけど、取調室での夢でバッチリご対面しているのに、事件に関するトラブルがないのが不思議すぎる」  ぽつりと、ひとりごちてしまった。  勿論、山上先輩から返事はないけれど、それでも何かを伝えずにはいられない。天国から、聞いてくれているといいな。  夢の中の水野親王と翼の君は、あの後どうなったのだろうか。華麗に琴を奏でる翼の君の傍に、そっと寄り添うようにして、水野親王がいるんだろうなって、何となくだけど想像がつくけれど。  でもきっと平穏な日々が、長く続くとは限らないんだ。現に自分が、そうなのだから…… 「警部になったら間違いなく、警察庁に飛ばされるのが、目に見えるんだよな。山上家の呪い、再燃なんだよ山上先輩」  ため息をつきながら、墓石に向かって、つい愚痴ってしまった。  山上達哉の恋人だった俺を、傍に置いて監視したいだけ。余計なことを、言わないように―― 「もしかして二つの夢が重なったことで、お告げがくだされたとか?」  晴れ渡った大空を見上げ、取調室の夢を見た10日後のことを、ぼんやりしながら思い出す。  その日の俺はいつも通り、仕事をこなしていた。大きな事件がなかったので、溜まっていた書類整理をしていたとき。 「ミズノン、呼び出しだぞ。取調室3番にだってさ」 「取調室? 何か事件ですか?」  小首を傾げながら、上田先輩に問いかけてみる。
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