ラストファイル3:伝家の宝刀

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 俺の肩を二度叩くと嫌味な笑い方をしながら、取調室を出て行った山上警視正。その後を茫然自失しながら部署に戻ると、上田先輩が俺の頭を、優しく撫でてくれた。 「ミズノンがここに来る前、まだ山上が生きてた頃。あの人よくやって来て、俺らの尋問していってたんだ。腹の立つことしか言わないし、何度手が出掛かったか。偉いな、よくガマンした」 「上田先輩……」  その言葉に、鼻の奥がツンとしてしまった。 「しかし最後は見事に、やられちまったな水野。関監察官がお呼びだぞ、監察室に行って来い」 「デカ長? やっぱり見ていたんだ」 「何を、腑抜けたツラしてやがる。このまま、ヤツの言うことを聞くわけじゃないだろ。気を引き締めて、関さんの所へ行け。山上が残した時限爆弾の話、聞き漏らすんじゃねぇぞ」  言いながら俺の背中へ、気合を入れるように強く叩く。 「時限爆弾って?」 「あ~、ミズノン知らないもんな。別名、伝家の宝刀。実は俺も、一枚噛んでるんだ。ついにミズノンにも、話が回るのか。働けよー、お前」  きょとんとする俺に、デカ長と上田先輩が嬉しそうに笑い合う。
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