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――お前を殺して僕も死ぬ――
そう言った山上先輩は、自分だけ先に逝って、残された俺を守るように置いていった伝家の宝刀。あの後、関さんからいろいろ話を聞き、胸が切なくなってしまったんだ。
そのことを思い出して、目の前にある墓石に、思わずぎゅっと抱きついてしまった。
「どうして俺は貴方に、守られてばかりいるんだろう。そんな事を、望んではいないんだよ山上先輩。これじゃあいつまで経っても、ひとり立ちが出来ないじゃないか」
コツンと墓石に、頭をぶつけた瞬間。
「お墓に抱きついて、何をしてらっしゃるんですかー。みっともないですよ宮様」
背後から聞こえた翼の声で、ハッと我に返る。
「遅かったねツン。随分と関さんとこで、濃厚なお話し合いをしたみたいだけど」
遅れてくるのが当たり前になってる、翼との待ち合わせ。毎度のことなれど、つい不機嫌になってしまうネタだ。
「あ~、いろいろあってさ。というか、いい加減に宮様ごっこ、止めたいんだけど。ふたりきりの時限定とはいえ、バカバカしくなってくる」
「自分から始めたクセに、何を言ってんの。俺の唯一の安らぎを、取り上げないで欲しいよ」
「安らぎ……マサの考えてること、さっぱり分からねぇな」
寂しげに笑って、目を伏せる。なんだろう、いつもとどこか感じが、違う気がする。
「それよりもお前、いつまでその格好でいるつもりだ? お気に入りのシャツ、濡れちまってるぞ。風邪引いたら俺が、山上に祟られそうだ」
お墓参りに行く時は、このピンク色のワイシャツを着てお参りしていた。
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