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山上先輩から貰った、最初で最後のプレゼント――このワイシャツを翼も気に入ってくれて、これに似合うネクタイを、わざわざ買ってくれたのだ。
『何だかんだ言って、お前に首ったけなんだよな』
テレながら言うと後ろから腕を回して、ネクタイを締めてくれた。
――山上を好きでいる水野を、丸ごと包み込めるような、大人になってやる――
君の優しくて寛容な心に俺は、いつも支えられているよ。
無造作に地面に置かれている俺の背広を手に取り、自分の腕にかけてから、濡れてしまった所を丁寧に、ハンカチで拭ってくれた翼。
「祟られるのはきっと、無作法をした俺だよ。バチあたりなことをしたんだから」
「お前の責任の半分、俺が背負ってやるって。だからあんまり、変なことするんじゃねぇぞ」
そして優しく俺の肩に、背広を羽織わせてくれる。
「変なことなんかしないもん……」
「してたから言ってるのに。強情なヤツだな。その強情さで、警部の試験を断ってるんだって?」
不意に投げられた言葉に目を見開いて、まじまじと翼の顔を見てしまった。
「俺のことは気にせず試験、受ければいいじゃん。合格間違いなしなんだろ」
「試験と君は、関係ないんだよ。そうじゃなくて……」
……弱ったな。何て言って、説明したらいいんだろう――
困って頭をポリポリ掻いてると、おもむろにポケットから、CDを取り出した翼。
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