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その言葉に力なく、首を横に振った。翼には普段から十分に、助けてもらってるから大丈夫――
「これは俺のヤマなんだ。自分の手で、解決しないといけなくってさ。本当は君を巻き込みたくはなかったんだけど、俺と付き合った事で、目をつけられちゃった。ゴメンね翼……」
微笑が泣き顔に変わる瞬間、翼の体にきつく抱き寄せられる。
「謝るなよ……勝手に惚れたのは、俺なんだから。その事について、俺に謝っては欲しくないだろう?」
少しだけ背の低いマサの頭を、優しく撫でながら言ってやると小さく頷いた。耳元で鼻をすする音が、絶え間なく聞こえる。
「俺さ、嬉しかったんだ。山上の事を選ぶんじゃなく、俺を選ぶって言ってくれたお前の言葉がずっと、胸に残っててさ。選ばれた以上は、どんな事があっても、傍にいたいって思ってる」
「翼……」
「マサの現在形は、山上が作ったものだ。山上のお陰できっと、巡り逢えたって感謝してるから、こうして墓参りに来てるんだぜ。だのに何かさ、泣かせてばかりいるよな。しかも俺は、あの頃と――高校生の頃と、ちっとも変わってねぇし。いつまで政隆に、おんぶに抱っこしてるんだか」
更にきつくぎゅっと、マサを抱きしめてやった。
「翼は変わってるよ。出逢った頃よりも、ずっと大人になったって。あ、でも相変わらず、メールで愛の告白してくれないよね。いっつも、(´・д・`)バーカとか、キライだ(*`д´)ばかりで、ちょっと寂しいんだけどさ」
文句を言いながら俺の胸元で、柔らかくk笑うマサが可愛く思えた。
「だって、文字に残したくねぇもん」
メールを読んで盛大にテレまくった後に、返信する自分の姿を想像しただけで、くらくらと眩暈がする。
「文字にしない分、言葉で言ってやってるだろう。足らねぇのかよ?」
呆れまくってる俺に、抗議するかのような上目遣い。まったく恋人のおねだりは、絶大な力を持つ。
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