Recipe.03

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  その期待に応える気は、サラッサラ無ぇからな。 「でも、魔が差す。とかあるだろ?」 「やっぱ、男だしなぁ」 「やめろ。そーゆーの」 コイツら、他人事だと思って楽しそうに。 「正直。公隆って、はるの事どー思ってんの?」 「……チワワ」 「は?」 「や、よく吠えるし、警戒心強いし、特に、でっかい目で見上げてくる様は、正にチワワ」 色はブラックタンで、ロング。って感じだな。 「いや、そーじゃなくて」 「何だよ?チワワっぽくね?はる」 「や、言われればチワワっぽいけど。そーじゃなくて、恋愛感情として。だろ?今は」 恋愛感情としては、見る気が無い。 今も、昔も、この先も。 「いいよ。そーゆーのは」 「そこまで拒否るって事は、つまりは、意識はしてる訳だ」 そうニヤリと笑う慎に、軽い殺意を覚えそうだ。 「……意識っつうか、一緒に居る時間が長いと、訳解んなくなるんだよ」 「訳解んなく?」 「はるが、……友達なのかオンナなのか、見失う時がある」 あぁ、俺、意外に酒回ってるな。 何を口走ってんだろ? 「はるは?公隆の事、どー思ってんだよ」 「別に?普通に友達、だろ?」 だからこそ、こーゆーのはダメなんだよ。 アイツ、ただでさえ、平均より裏切られ経験多いんだから。 俺だけは、裏切る訳にいかないんだって。 「友達の家に入り浸る性格じゃなかった気ぃすっけどな?オレらの記憶のはるは」 「付き合いも長くなると、イロイロと慣れ合う事も多いんだよ」 あっんなに無防備にしてるはるを、そーゆー目で見る事自体、裏切りの第一歩だろ? 中学からの友達だったアイツらに裏切られて、傷つけられて、職場でも裏切られて、彼氏にも裏切られて。 それで、ボロボロになった時、常にはるの側に居た俺としては、 絶対に、その信用を裏切れない。 「なぁーんか、コレに似てるな?」 「あ?」 呑気な顔して、孝博がラスト一つのクレームブリュレを指さす。 「クレームブリュレ?」 「そ。この甘くて薄いカラメルが、公隆が守ってる友情の一線」 は? 首を傾げる俺に、孝博が口角を上げて、手にしたスプーンをクレームブリュレに差し入れる。 小さな音をたてて、砕けるカラメル。 「で?コレが、その線を越えた先」 「……っ、な、んだよ。ソレ」 言われた言葉に、ザワリとココロが粟立った気がした。  
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