Recipe.04

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  キミにオンナとして見て貰える日なんて、 一生、来ないんだ。 「はるっ!」 背中から聞こえる声。 その声はキミのもので、でも、振り向きたくない。 「ちょ、待てって。はる」 ワンピースを着たって、私がなれるのは、せいぜい妹。 動物から、ヒトに昇格しただけ、マシかもしれない。 「はるっ!」 不意に左耳にダイレクトに響く声。 視界に、キミの右腕。 「お前、無視すんなよ」 掴まれてるのは、私の左肩で。 つまりは、キミの右腕の中にアッサリと納まってしまっていて、 「……放してよ」 ますます、自分の小さな身体が憎い。 傍から見たら、本当に兄妹程度にしか見えないんだ。 「怒るなって」 「何が?」 「だから、……説明する程でも、ないだろ?」 「私の事は放っておいてくれて大丈夫よ?5月生まれのお兄ちゃん」 1ヶ月とは言え、この世に生を受けたのは私の方が先なのに。 「だから、悪かったって」 「知らない。あの人のところに戻れば?」 「戻んねぇって」 必死なカオして、そんな事言うけど、私がどんな気持ちかも知らないじゃない。 別に、妹扱いされて、怒ってる訳じゃない。 「戻っていいってば!」 「だから!アイツとは退社時間が一緒で歩いてただけ!そもそも、アイツは南北線。俺らは東豊線だろうが」 その声が、無駄に響く。 帰宅時間だから、周りの人がチラチラと見てるのも、解る。 でも、今はそんな事はどうでもいい。 「……彼女じゃないの?」 「何でそうなる?」 「くっついて歩いてたじゃない」 「あーゆーヤツなの」 ……キミって、私にだけじゃなくて、本当に普通に、鈍感なんだ。 「何だよ?そのカオ」 「……知らない」 アレは、あの彼女の片想いで。 でも、もう、本当、どうしていいのか解らない。 あんなキレイでスラッとした、でも可愛らしい仕種が出来る子とどう勝負すれって言うの? キミなんて、私の事、今も荷物程度にしか思って無いのよ? もし、私が暴れようものなら、小脇に抱えそうな勢いだもん。 「なぁ?機嫌治せって」 「もう、いいってば」 それでも、すぐに追ってきてくれた事には、喜ぶべき? 機嫌を取ろうとしているのに、喜ぶべき? 「逃げねぇ?」 「キミの方が足速いでしょ?どーせ」 「逃げられるって事で、俺のココロは傷つくだろ?」 「粉々になればいいのに」 「お前ね」   も、解んない。  
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