Recipe.04

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  「逃げるなよ?」 そう耳元に降ってくる声が、少しだけいつもと違って響いて、熱が集中するのが解る。 「解ったから、放して。ジロジロ見られて恥ずかしいでしょっ!」 「ん?あぁ」 やっと解放されて、でも、まだ顔を見られたくないから俯く。 「……んな、怒るなって」 「別に怒ってない」 「はぁる?」 目を合わせずに歩き出す私に、後ろからついてくるキミの声。 機嫌を取ろうとする時、必ず間延びした呼び方をする。 「別に、アイツに正直に話す必要ないと思っただけだってば」 「だから、怒ってない。別に小さいのは解ってるもん。童顔なのも。いいよ、妹でも何でも」 サイズが小さいんだから、結局は大人っぽいカッコなんて似合わないし。 解れって言う方が無理なのかもしれないけど、そんな事じゃないもん。 ただ、……オンナにも見て貰えない、妹だと否定もして貰えない、それが悲しいだけ。 ワンピースなんて、着るんじゃなかった。 「ってか、何でそんな珍しいカッコしてんの?お前」 「……別に。たまたまワンピース出て来たから着てみただけ」 「はるのスカートって、高校の制服以来に見たかも」 「あっそ」 キミが私のスカートにも足にも興味が無いって事は、よぉぉぉく解った。 わざわざ、自分の傷口を広げただけだったよ。紗良。 「……お前、俺ん家来る時以外は、やめとけよ?それ」 「は?何で??」 「や、お前小っさいし、」 だから、言われなくても解ってるって! 思わず、キミを睨みつければ、大きな手がポンポンと頭を撫でる。 ほら、今度は子供扱い。 「危ないだろ?んなカッコで、一人で夜道歩いたら」 「……何で?」 「誘拐されかねない」 なるほど。 子供扱いじゃなくて、もう子供にしか見えない訳ね?私。 「お前さ。黙ってれば美少女なんだから」 …………。 引っかかる言葉が一つあったものの、意外な言葉に思わず足を止めて、キミを見上げた。 「何だよ?」 「……今、何気に褒められた?私」 「褒めたつもりは無ぇけど。……まぁ、そーゆーオンナノコなカッコされると、やっぱ美少女なんだな、とは思うよ。癪だけど」 やっぱり、一言余計だけど。 ちょっとは、……オンナに見えた。と、思ってもいいの、かな? 「とにかく。危ないから、そのカッコで一人で歩くな」  
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