Recipe.05

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  「……やっぱり、居るんですか?」 「や、やっぱり。って」 違う。 今、はるが頭を過ったのは、今、一番近い距離に居るのがアイツだからで。 好きは、好きでも、その好きじゃない。 「あの、な。咲山はキレイだし、可愛い後輩だけど、……正直、オンナとして見た事が無いって言うか、」 「お試しとか、ダメですか?」 「は?」 お試しって。 何でだ? うちの社内で、かなり上位人気の咲山が、何をどうして俺に告白なんかしてくるんだ?? 「あの、咲山、」 「私に、……チャンス、くれませんか?」 可愛いなぁ、をい。 いや、違う。 可愛いのは元からだ。そーゆー事じゃなくて。 「咲山、……あの、」 「私の事、オンナとして見てない内に、結論出さないで下さい」 いや、まぁ。 確かに、蓋を開けてみなければ、中身は解らない訳だけど。 「せめて、……ちゃんと私を見てから、結論出して下さい」 「……あー、」 これは、困ったぞ。 基本、はる以外の女の涙は苦手なんだよ。 どうすりゃいいか、さっぱり解んねぇから。 「解った」 「っ、」 「ただ、お試し。とかは、やめとこ?何か、そーゆーのは、違うだろ?」 何か、相手を軽んじてるみたいで、好きじゃない。 「ちゃんと、私の事、見てくれますか」 「見る様にする。ちゃんと、後輩としてじゃなくて、咲山涼っていうオンナノコとして、見てみる」 そう言えば、凄く嬉しそうに笑う。 そこいらの咲山ファンの男共は、この笑顔で死ねるだろうよ。 って位、威力のある笑顔。 はるを見慣れ過ぎてる所為で、美少女には免疫があるけど、凄いな、この笑顔の威力。 「私、頑張りますから」 「……ん。あ、」 「はい?」 「応えられるかは解んねぇけど、……気持ちは嬉しい。ありがと」 伝えたソレに、また笑顔。 純粋に、本当に、怖ろしく可愛い。 可愛い、んだけど、な。 大きく頭を下げて去っていく後ろ姿。 ソレを見送って、残された休憩室で、思わず天井を仰ぐ。 何か、どんどん事態が複雑になってきたぞ? 大事な友達である、はるにオンナを見て。 でも、そこにあるのはあくまで下心なしの愛情の筈で。 それを抱いてもいい咲山に告白されても、アイツをオンナとして見れる気がしない。 何だ、これ?? 慎や孝博に、彼女を作れ。と言われた。 だけど、はるから逃げるみたいな理由で、咲山の想いを利用するなんて許されない。  
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