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「あっぶねぇな」
「口は災いの元ってのを教えてあげたの。優しいでしょ?」
「……にゃろ」
シャチハタだってな、ンな全力でぶつけられたら痛ぇんだぞ?
「あ。でね?実家からだったから、とりあえず、冷蔵品は冷蔵庫にしまったから」
「……どーも」
助かるけど。
友達じゃなくて、彼女レベルの行動な気がしないでもない。
「一度聞いてみたかったんだけど、お前、俺をどーしたいんだ?」
「何?どーにかされたいの?」
そー返ってきたら、何も言えないだろーがよ!
「……メシ食う」
「ん」
言って、台所に戻る後ろ姿に、やっぱりため息。
深山はる。
小柄で華奢な身体。
大きな黒目がちな目に、整った顔立ち。
ふわふわと揺れる髪は、柔らかい猫っ毛。
まぁ、美少女ってヤツに分類されるタイプ、なんだと思う。
見慣れ過ぎてるのと、中身が中身だから、その言葉をココロが拒絶すっけど。
それが、俺の女友達だ。
「どの位食べる?」
「普通」
「んー」
友達な、筈なんだけど。
こうも、頻繁に家に入り浸られると、何だか関係性を見失いそうだ。
別に嫌じゃない。
嫌じゃないけど、何か違う気がする。
大事な友達。
長い付き合いだし、こんなに近い距離の女友達は二度と出来ないと思う。
だからこそな今なのか、何なのか。
試されてんのか?俺。
誰に?
神様ってヤツに??
「あ、あとね?キミの実家から送られてきた長芋のお漬物があまりに美味しそうで、開けちゃった」
「はいはい」
「すっごい、美味しかった」
「俺の分、残ってんだろうな?」
「我慢した」
でも。
はるの行動のスベテは、俺が許容したモノで。
結局、コイツの浸食を受け入れてるのは、
俺なんだよなぁ。
「……はる」
「ん?」
「髪、食ってる」
言って、その髪を指に絡める。
見上げるその目は、チワワみたいで卑怯だと思う。
「何だかなぁ」
「何?」
「いや、別に」
可愛いのは事実。
ただ、これは動物に対する感情に似ていて、
コイゴコロでは無い。
違う。
だから、はるに恋心を抱く必要が無い。
「あ、このきんぴら美味い」
「でしょ?作り方教わったから、とりあえず作ってみたくて」
中学からの付き合い。
既に、付き合いの長さは人生の半分を占める。
今更、だ。
それなのに、何で今更、
揺れる自分が居る??
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