Recipe.07

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  はるの居る週末に慣れていた。 知らない内に、当たり前だと思ってた。 勿論、毎週必ず居た訳じゃないけど、 二週連続で、いや、今日でまるまる三週間、居ないのは初めてだ。 電話には、出る。 メールも、返って来る。 でも、顔を見せない。 やっぱりオトコでも出来たか? それとも、告白されたのを知って、距離を作ってる?? 参ったぞ? 距離を置いた方がいいと思ってたのに、会わない方が微妙な気分だ。 「浅野さん?」 「っ、あ、あぁ。悪い。何だっけ?」 その分?咲山との時間が微妙に増えつつある。 時間が合えば、地下鉄駅まで一緒に歩く。 更に時間があれば、メシを食ったり。 でも、それだけ。 咲山は可愛いと思うし、一緒に居て嫌な訳でもない。 ただ、自分でも驚く程に、オンナに見れない。 後輩、なんだよな。結局。 「甘いモノって、食べます?」 「あぁ。普通に」 「クレームブリュレの美味しいお店があるんですけど、寄りません?」 ……クレーム、ブリュレ、ね? はるが来ないから、ソレも最近食べてねぇな。 「焼きプリン」 「日本語だとそーですね」 そうニッコリ笑う咲山。 はるには、必ず突っ込まれてたんだけど。 「嫌いですか?」 「……いや。好きだよ」 そう答えれば、やっぱり笑顔の咲山。 俺、本当に好かれてるんだなぁ。と思うけど、不思議と1ミリもココロは揺れない。 咲山を後輩以外と思って見る努力はした。 オンナとして見る努力も、した。 でも、肝心のココロが揺れないんだよなぁ。 「あ、浅野さん。ここです」 「あー」 言われた店の店名は、見覚えのある文字。 一時期、我が家の冷蔵庫を占領してたクレームブリュレに書いてあった文字が、コレだ。 「有名なんだ、ここ」 「食べた事あるんですか?」 「ん」 中のカフェスペースに通されて、向かい合って、コーヒーとクレームブリュレ。 家で食べる時は、必ず麦茶だった。 「美味しそう」 その細い指に持ったスプーンを差し入れれば、耳なじんでいた甘いカラの割れる音。 「っ、美味しい!」 「咲山。食うの初めて?」 「実は、友達に聞いたんです」 本当、笑顔が可愛いと思う。 意外にも、ちゃんと美味しそうに食べる姿は、普通に好感が持てる。 少食アピールの女子は嫌いだから。 まぁ、はるみたいなのは少ないってのは解ってるんだけど。 食いモンは美味そうに食ってなんぼだろ?  
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