Recipe.01

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  言えば、ほんのり冷たい視線を貰って、フォークが視界から消えたけど。 「ってか、そのフォークは何の為のモンなんだ?」 俺、いつか刺されるんじゃねぇの?コイツに。 「あぁ、食後のデザートに食べようかと思って」 「また、焼きプリン?」 「クレームブリュレ」 いや、同じだろ? 日本では焼きプリンだから、ソレ。 「焼きプリン」 「クレームブリュレ」 「……どっちでも良くないか?」 味が変わる訳でも無いんだし。 「キミの分は無くても良いのね?」 「クレームブリュレ」 「よし」 俺は、しつけされてる犬か?? 「ブリュレって、どーゆー意味?」 「焦がす。とかじゃなかったかな?フランス語」 「へぇ」 焦がす。ね? スプーンを差し入れれば、甘いカラが砕けて、その下に隠れてる柔らかいクリームが姿を見せる。 まぁ、確かに、プリンってよりはクリームって食感だよな。 「最近、こればっか食ってねぇ?」 「好きなんだもん」 「その前は、ティラミスにハマってたよな?」 「うるさいな。要らないなら、それ以上食べるな」 「や。食うけど」 何だろうな? これ食ってると、何かが過るんだよなぁ? 何かに、似てる。 食いモンじゃなくて。 状況、っての?? 「このパリッてのが、何かドキドキしない?」 「何だそりゃ?」 「いいの。この感じが好きなの」 俺、その感じが、何かザワザワすんだけど、な? 「さて。デザートも食べたし、片付けて寝よーっと」 「食ってすぐ寝ると、……」 太らねぇな。コイツ。 何で、この時間にこんな甘いモン食ってすぐ寝るのに太んねぇの? 「何?」 「いや。よく寝て育てよ」 「何か含みがない?ソレ」 「無い」 若干、不満げな顔をしつつも、食器を片づける後ろ姿を見送って。 やっぱり、ため息。 何なんだろうなぁ、コレ。 入り浸る頻度は確かに増えた。 その所為なのか、自分の中で揺れる、何か。 別に、入り浸ってるからと言っても、アイツはアイツで好きな事をして、俺も俺で別に何って訳じゃない。 喋らない時は全然喋らないし、だからと言って、ソレが苦でもない。 アイツも、していい事とダメな事の区別はシッカリつけてる。 俺も、許してる。 それなのに、どうしても引っかかる。 男女間の友情は成立する。 今迄だって、成立してきた。 この先だって、……変わらない。 変わりたく、ない。 [Next]
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