Recipe.04

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  好きって言ったら、好きになってくれればいいのに。 言霊。 なんてものが本当にあるなら、言葉にスベテを込めるのに。 見つけたワンピースに袖を通して出勤すれば、紗良と恭久くんは大絶賛してくれた。 こんなモノで、少しでもキミにオンナだと思い出して貰えるならと思って着た。 帰りに、いつものクレームブリュレを買ってキミの家に向かおうと、思った。 のに。 「…………きみ、たか?」 地下鉄駅に向かう途中、視界に入ったのは、キレイな子と一緒に歩くキミの姿。 細身のキレイなオンナノコと、笑顔を交わす、キミの姿。 何?その、あからさま位に、キミのタイプの子。 細くて長い指がキミの腕を軽く掴んで見上げる笑顔に、キミも笑顔を返す。 何?その、優しい笑顔。 最近、私には、呆れた様な表情しか向けてくれないクセに。 私には、そんなカオ、してくれないクセに。 ビニール袋を持つ手に、力が入る。 爪が食い込んで。 その痛みで、紛らわす、痛み。 結局、ワンピース着たところで、意味なんて無かった? そーだよね。 キミの好みは、元々がそーゆー子だもん。 私とは、正反対の子、だもんね? 「はる?」 人込みの中、立ち止まりそうになった私の頭上から降る声。 「……え?」 「あ、やっぱ、はるだ。普段着てねぇモン着てるから、人違いかと思ったけど、」 見上げたそこには、キミが居て。 でも、その肩越しにこちらを見る、キレイな子も、居る。 「危ないぞ?こんなトコで、ノロノロ歩いてたら」 「…………あ、」 キミの腕が、私の手を掴んで、そっと歩く様促す。 「お前も帰り?」 「……うん、」 「んじゃ、帰るか?」 言われてキミを見上げれば、いつも通りのカオ。 そして、視界の端に、こちらを見るオンナノコのカオ。 「……浅野さんの、妹さんですか?」 妹? 「え?」 「あ、違いました?」 「いや。……まぁ、うん」 それに、否定しないキミ。 あぁ、そっか。 キミの私に対する全部が、動物扱いで、そして妹扱いなんだ。 本当、私は、何しても無駄なんだなぁ。 「……お兄ちゃん。私、一人で帰るから大丈夫だよ」 「は?」 「デートなら、ゆっくりしてきて?じゃあね」 もう、無理だね? 私に、可能性なんて、きっと欠片もないんだよね? 「ちょ、はる!」 「ばいばーい」 何もかも、無駄なんだ。  
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