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部屋に荷物を纏めに戻されれば、ドアをノックされる。
「はい?」
返事をすれば、開けてくれ、との声。
上総だった。
「ゴメン。今、荷物纏めてて、手が離せないんだ」
そう返せば。
「はあっ!?何で荷物を纏めてるんだよっ!?」
ドアを開けようとガチャガチャされる。
「あ、上総……悪い。俺、リタイアするんだ。病院に行くことになって。迷惑掛けてゴメンな?」
ドア越しに上総に謝れば、そんなに具合が悪かったのかよ?と泣きそうな声。
「あー。……や、実は記憶喪失になっててさ。皆の事は認識出来てるのに、これまでの事全部が全く思い出せなくて。そのせい、かな」
そう言うと暫く間を置いて。
「それって……もしかして駅から?」
ズバリ言い当てられた。
「おう、よくわかったな?」
驚きながら聞けば。
「お前、駅から様子がおかしくなったから」
そう答えが帰ってきた。
あー、おかしかったかぁ。
「そっか。普通にしてたつもりだったけど、馬鹿みたいだな?そりゃあ、それまでの俺がどんなだったかも覚えてないのに当然か」
苦笑いで言えば。
「別に何時もの黎と違ってた訳じゃ無いよ。ただ様子が変だったって事!直ぐに言ってくれれば良かったのに」
親友だろ?とドアをパンッと叩かれる。
「あー、ゴメン。かなり混乱してて、余裕無くて。ま、俺の事は良いよ。上総は頑張ってな?」
「お前、他人事みたいに……」
「リタイアだから他人事だろ?ああ、透にも拓実にも謝っておかないと」
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