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「おい、黎?お前大丈夫なのか?具合が悪いなら保険医の所に行くぞ。出てこい」
ドンドン叩かれるドアの音と共に聞こえてきた声は……担任の勝呂先生、か?
声で判断出来て名前もわかるけど、やっぱり過去の記憶が出てこない。
けど、先生なら開けない訳にいかないか、と渋々起き上がってドアを開ける。
ちょっとだけ開けて顔を出すつもりが、ガバッと開けられて腕を掴まれる。
「やっと捕まえた」
驚いて身を退けば、怪訝な顔をする上総。
「おい、上総、乱暴にするな。保険医の所に連れて行くから黎から手を離せ」
勝呂先生に窘められて剥れる上総だが、俺の顔を見るとパッと手を離した。
「お前、全然大丈夫じゃ無いだろうが」
上総の震える声に小首を傾げれば、酷い顔をしてるぞ、と言われる。
「黎、歩けるか?」
勝呂先生が手を差し出して俺を支えようとする。
その手を借りて部屋を出れば透と拓実も近寄って来て、大丈夫か?と声を掛けてきた。
「心配掛けて悪いな。俺の事は気にしなくて良いから」
そう言えば、そんな訳にいかないだろ?と拓実。
「兎に角、ちょっと行ってくる」
勝呂先生にお願いして、部屋から出て廊下を進む。
「黎?大丈夫か?具合悪いのか?」
見覚えのあるクラスメイトが俺を見るなり心配そうに声を掛けてくる。
「身体が弱いんだから気を付けろよ?」
そんな事を言われて、へ?と思うが、ありがとう、と返して先を急ぐ。
とは言え足に力が入らなくて、勝呂先生に支えられてゆっくりしか進めないのだが。
そして保険医の居る部屋に辿り着けば、中には保険医の大川先生の他にスクールカウンセラーの安田先生が待っていた。
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