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「なぜあんなことを?」
驚き言葉を失っている焔帝の代わりに水帝が尋ねてくる。
なぜ、あんなことを.....か。
出来れば俺もしたくなかった。
「こうする以外他に方法がなかった。ここで俺はお前らに倒された事にする」
「な.....。雷帝、お前は俺らを守るために.....?」
「お前らが帝じゃなくなったら誰が王都を守るんだよ」
「で、でもお前は!」
「俺はお前らと違ってまだ若いからな。なんとでもなるさ」
「・・・っ」
それ以上、誰も俺を止めようとはしなかった。
割り切ったわけじゃない。
これからありもしない罪を課せられ、罵詈雑言を浴びせられる。
そして歴史に史上最悪の敵として名を残し、語り継がれるだろう。
そう思うと正直、震えが止まらない。
そんなこと.....嫌に決まっている。
なぜ王都を救った俺が悪役にならなくてはならないのか.....。
考えれば考えるほど気持ちは暗くなっていく。
「俺たちは知ってるからな」
まるでの心境を知っているかのようなタイミングで焔帝が言った。
その言葉が胸に刺さり、目から雫が零れ落ちる。
「なんだよ、ガキみてぇなとこあんじゃねーか」
「うるせぇ。.....ありがとな」
その言葉を発した時にはもう体の震えは止まっていた。
「じゃあ、後の事は頼んだぜ」
そう言い残して俺は転移した。
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