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アーモンドのような形をしたバシリク大陸のほぼ中央、北と南を分断するかっこうで連なるアトラス山脈。
メイヤク
古き盟約により、アトラス山脈を含む南側はエルフやドワーフなど、人間が言うところの“亜人”達の領土。北は人間達の領土であった。
アトラス山脈の北側のふもと、つまり主に人間達が暮らす土地。そこに雪どけ水が湧き出してできた、さほど大きくない湖がある。
その湖のまんなかに浮かぶ小さな島に、サフィスの住む“雪の城”は建っている。
雪のように白い石造りの建物で、中央
セントウ
の大きな尖塔を取り囲むように、小さな5つの尖塔が建っていて、上空からみると雪の結晶のようなデザインになっている。
周囲を水で囲まれた城にたどり着くには、泳ぐか舟に乗るかだが、舟があるのに、わざわざ泳いで湖を渡る者はいなかった。
来訪者がいたとしても、必ず船着き場のある正面入り口側から、という思い込みがあった。また、湖という天然の堀と、魔女が住む城という不気味さからか、これまで賊が侵入したことはなかった。
こんな辺境の地を訪れる者などめったにおらず、せいぜい月に一度、王都から書簡や金銭を持った使いが来るくらいだ。
だから、誰も気が付く事は無かった。
湖を歩いて渡れる者が居るとは、思いもしない。
不吉な影が水面に波紋を広げながら、一歩ずつ、雪の城へと近付いていた…
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