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「マーリンですか?どうぞ…」
振り向きもせず、可能なかぎり不機嫌そうな声で返事をした。察しのいい人間ならば、虫の居所が悪いことを感じるはずだが、老魔術師はお構いなしにサフィスの横にどかっと座った。
サフィスは目を合わせようとはせず、無意味に噴水の水を掻き回していた。
老魔術師はしばらくサフィスの横顔を
覗きこんでいたが、いっこうにサフィスが口を開かないので、自分から喋りはじめた。
「ところで、サフィス様はお幾つになられました?」
はあぁぁぁっ!と思わずため息が漏れた。
そんな質問など十分に予測し、十分に準備していたはずなのに…
「女性に歳をきくなんて、失礼です!」
「いや、わしはただ、サフィス様のよう
な、お美しい人がこんな所で終わってしまうのかと思うと…」
「こんな所で終わるつもりはありません!結婚の話は止めてちょうだい!だいたい、人に言われてするものでもないでしょう?」
「もちろん。わしがどうこう言うものではありませんが、やはり年齢的な事を考えますと…」
「それが余計なお世話なんです!」
最近のマーリンは、サフィスを見つければ結婚の話ばかりしていた。
だいたい毎日がこんな感じだった。何も変わりばえのない、平凡な毎日。
その時──
「敵しゅ───う!」
メインホールに野太い声が響きわたった。
衛兵の隊長サイモンの声だ。
サフィスとマーリンは声の方を向いたが、噴水が障害物となって正面入り口は見えない。二人は噴水の縁を廻り込んで声のした入り口を見た。
二人を見つけ、サイモンが巨体を揺らし駆け寄って来る。
「サフィス様、マーリン様、ご無事でしたか?何者かに襲撃を受けているようです!」
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