第一章 魔法石 その1 始まり

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「マーリンですか?どうぞ…」  振り向きもせず、可能なかぎり不機嫌そうな声で返事をした。察しのいい人間ならば、虫の居所が悪いことを感じるはずだが、老魔術師はお構いなしにサフィスの横にどかっと座った。  サフィスは目を合わせようとはせず、無意味に噴水の水を掻き回していた。  老魔術師はしばらくサフィスの横顔を 覗きこんでいたが、いっこうにサフィスが口を開かないので、自分から喋りはじめた。 「ところで、サフィス様はお幾つになられました?」  はあぁぁぁっ!と思わずため息が漏れた。  そんな質問など十分に予測し、十分に準備していたはずなのに… 「女性に歳をきくなんて、失礼です!」 「いや、わしはただ、サフィス様のよう な、お美しい人がこんな所で終わってしまうのかと思うと…」 「こんな所で終わるつもりはありません!結婚の話は止めてちょうだい!だいたい、人に言われてするものでもないでしょう?」 「もちろん。わしがどうこう言うものではありませんが、やはり年齢的な事を考えますと…」 「それが余計なお世話なんです!」  最近のマーリンは、サフィスを見つければ結婚の話ばかりしていた。  だいたい毎日がこんな感じだった。何も変わりばえのない、平凡な毎日。  その時── 「敵しゅ───う!」  メインホールに野太い声が響きわたった。    衛兵の隊長サイモンの声だ。  サフィスとマーリンは声の方を向いたが、噴水が障害物となって正面入り口は見えない。二人は噴水の縁を廻り込んで声のした入り口を見た。  二人を見つけ、サイモンが巨体を揺らし駆け寄って来る。 「サフィス様、マーリン様、ご無事でしたか?何者かに襲撃を受けているようです!」
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