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ガツガツと行儀悪く、大皿に乗った料理を掻き込んでいく男の人を、ボクはジトリ、と見てしまう。
つい30分前に、うちの玄関先に倒れていたとは思えぬ程の食べっぷりだ。
ちなみに今の皿で五皿目。うちの一日分の食料をあっさり食べ尽くしてくれた。
「いひゃ~わふひへぇ。ひっひゃひゃん、ひゃひほふっへははっひゃひゃら」
ボクのジト目に気付いたらしいその男は、口の中に大量の料理を入れたまま話しかける。
はっきり言って、口から色んなものが飛び出してきて、かなり迷惑だった。
というか、この人は本当に大人なんだろうか。見た目三十歳くらいだが、やってることは十歳のボクよりひどい。
「何言ってるか分かんないんで、食べるか話すかどっちかにしてくれませんか?」
「ひゃひゃ、ほへん」
また飛んだ。
ボクが盛大に顔を歪ませていることに気付かないまま、男の人はゴックンと口の中の物を飲み込み、ニカっと笑う。
「いや~悪いねぇ。三日間何も食べてなかったから。それにしても君、料理うまいねぇ。いい奥さんになるよ!」
「君じゃなくて、ピート。それにボクは男だから、奥さんにはなりません」
ズボンのポケットから今日のおやつのキャンディーを取り出し、包み紙をテーブルに捨てながらムスッと答える。
「はは、冗談だよ~。あ、僕の名前はスフリー。よろしくね」
何がよろしくかわからなかったが、スフリーが左手を差し出すので、とりあえず握手をしておく。ちなみにスフリーの右手は、まだせっせと料理を口に運んでいる。
そしてボクはキャンディーを舐めながら、スフリーが料理を食べ終わるのを待った。
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