【右腕の男】

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蘭花は俺が潰れていた姿を見たから…俺がまた潰れていないか……死んでしまったんじゃないか……そんな思いだけで、こんな姿で飛び出して来たんだ。 まだ、熱があるのに。 それなのに俺の事を考えて心配して。 蘭花。今、分かったよ。 この間お前が言った言葉が。 本当に辛いな。 好きな奴が愛してる女が自分の為に、何も返り見ずに全てを投げ出し潰れそうな姿を目の当たりにするのは。 ……お前が正しいよ。 俺には耐えられそうもないわ。 「……蘭花。…別れよう。」 蘭花の為に。 こんな情けない男に付き合わなくていい。 俺みたいな奴にいつまでも縛られなくていいから。 お前に心配される様な情けない男はお前の彼氏にふさわしくないよな。 守ってやると言ったのに、こんな姿で飛び出して来させる様な男の事は忘れてくれ。 『…ん。……私の事…忘れて…幸せになって…ありがとう。』 ……俺が蘭花の事忘れる訳ないだろ。 ……幸せなんてお前じゃないと無理なんだよ。 でも、お前が幸せじゃなきゃな。 「…蘭花!待て!お前!その格好で!」 立ち上がり手を差し伸べた。 蘭花は立ち止まり俺の手を止めた。 『…大丈夫。…大丈夫だから。…右腕として責任は果たして。輝条。』 ……総取締役。 蘭花は総取締役として俺と接する事を覚悟したんだ。 思わず手をグッと握りしめた。 何も言えずただ蘭花の後ろ姿を見ているしか出来なかった。
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