【右腕の男】

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蘭花がさっき言った言葉。 俺が話そうとしたのを止めるように連ねた言葉。 ……蘭花を守る責任感? ……俺を解放する? どう言う事だ? 俺の道を進んでって…。 俺の道は蘭花だ。 俺は昔から蘭花が居るから道が出来て来たんだ。 蘭花が居なきゃ俺の道は出来ていない。 俺は昔から俺の撰んだ道を進んでる。 だから、今の俺が存在するんだ。 蘭花を守るのも責任感とかそんな事じゃない。 蘭花の笑顔を守る為だけに俺は生きて来たから。 俺が蘭花を守りたかった。 蘭花の笑顔を守っていきたかった。 解放するって事も全く理解出来ない。 何から解放するんだ? 俺は今まで誰かに束縛された覚えは無い。 ずっと自分で決めた事をやってきたから。 蘭花の言葉を理解しようと考えてみたが、何一つ俺には分からなかった。 「……仕事。戻んなきゃな。」 いい加減戻らないといけない。 重い腰を持ち上げ部屋から書類を取り会社に戻った。 とにかく今は仕事をきちんとしないと。 明日は会社も休みだ。 ゆっくり考えよう。 気持ちを切り替え何とか仕事をこなした。 だけど、今日はあまりはかどらなかった。 蘭花の姿を見てしまったから。 蘭花の声を聞いてしまったから。 鍵を押し付ける形でも蘭花に触れてしまったから。 あの時、手を掴みかけた。 蘭花の透き通るような白く細い綺麗な手を握りしめたかった。 ……だけど今の俺にそんな資格は無い。 掴んでしまえば、きっと離せなくなる。 離したく無くなる。 蘭花を困らせてしまうから。 蘭花に辛い思いをさせてしまうから。 俺には蘭花に触れる事は出来ない。
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