【右腕の男】

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《……輝条。》 ……俺は総取締役の右腕 輝条 竜。 蘭花が輝条と呼べば右腕として接しなければならない。 手をグッと握りしめた。 「……はい。どうしましたか?」 《……輝条。お願いがある。》 総取締役の蘭花からお願い?何だ? 「……はい。何でしょうか。」 《…半年…半年間だけ代理として総取締役の任を果たしてほしい。》 ……代理?…半年? 「…代理?…代理ですか。…半年って…どう言う事ですか?」 《……しばらく…留守にする。…だからその間だけでいい。頼む。》 …留守ってどう言う事なんだ? 「…理由は教えていただけないのでしょうか。」 理由を知りたい。 《……輝条には関係ない。…とにかく2月から半年間。総取締役として頼む。》 …関係ない…か。 「…分かりました。」 《…それじゃあ…》 電話をきろうとする蘭花に思わず叫んだ。 「蘭花!切るな!」 総取締役としてじゃない。 蘭花と話がしたい。 ちゃんと話がしたい! だけど、蘭花は辛そうに言うんだ。 《……やめて…もう…もういいから。》 その言葉と共に電話は切れた。 ……蘭花。 蘭花の声が震えているのが分かった。 俺がそうさせているんだ。 俺と話す事さえ蘭花には辛い…。
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