515人が本棚に入れています
本棚に追加
《……蘭花……別れよう。》
咄嗟に出た言葉だった。
あんな姿で俺に会いに来た蘭花に俺は堪えられなかった。
高熱が出たと聞いていたのに、あんな薄着でしかも裸足だった蘭花の姿。
辛いはずなのに俺を心配して来た蘭花の言葉。
……俺の為に…俺のせいで…。
数日前、蘭花にキツイ事を言ってしまった。
いつもなら素直に謝る蘭花。
だけど、その日は違った。
『竜兄なんて嫌い!』
初めて言われた言葉。
蘭花の口から出た、俺を嫌いだと言う言葉に頭の中が真っ白になった。
どうしたらいいか分からず立ち尽くす俺に翔の友達だと言っていた男が必死に謝って来た。
『彼氏さん!すいません!本当に俺らが悪いんです!あの子、必死で逃げようとしていたのに俺らが引き止めたから!本当にすいません!』
そんな言葉は頭に入るはずもなく、フラフラとキッチンへ向かった。
約束していた料理を仕上げてやらないと……。
ただ闇雲に料理を仕上げた。
リビングに行くと翔と蓮兜、それにさっきの奴が居た。
『…竜。大丈夫か?蘭花の事だ。直ぐに機嫌なおすから気にすんなよ。なっ?』
翔が俺の所に来て肩に手をやった。
「…あいつに嫌いって言われたの初めてだ。…悪い。俺、帰るから。蘭花に料理は仕上げたと伝えてくれ。じゃあな。」
そのままリビングを出た。
……蘭花。
階段に目をやるが俺には今、蘭花の所へ行く勇気がない。
……情けない。
玄関を出て車に乗り込む。
気付けば家の駐車場。
何処をどうやって帰って来たのかすら覚えていない。
最初のコメントを投稿しよう!