【右腕の男】

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……半年間、留守にする。 何処に…何処に行くんだ。 俺には関係無いのか。 俺には言いたくないのか。 そう…だよな。 総取締役とその右腕としてでも蘭花と繋がっていられる事さえ出来ればと思っていた。 少しでも蘭花に会える。 蘭花の様子が分かる唯一の俺の場所だと思っていた。 だけど…居ないのか。 半年…長ぇな。 その間に蘭花は俺の事、忘れんのかな。 俺に対する愛情なんて綺麗サッパリ無くなるんだろうな。 半年間、居なくても総取締役として帰って来るから俺に代理を頼んだ。 総取締役を辞める事はしない蘭花の為に俺が出来る事は…。 蘭花が帰って来た時にも変わらず取締役会が機能している事。 …蘭花が帰るまでしっかりやらねぇとな。 頭ではそう思っていても、心の中では蘭花の震える声が響いている。 もう…いい。か。 戻れそうもねぇな。 いくら話がしたくても蘭花にその気がなければ、ただの迷惑なだけ。 蘭花は前に進もうとしている。 俺の事を忘れ前に。 …俺は。俺は前に進めるだろうか。 蘭花を忘れる事なんて出来そうもない。 …蘭花は強いな。 あいつはいつも強いよな。 男の俺なんかより、ずっと強くて。 「……情けねぇな。俺。」 俺の人生、蘭花でできてたのにな。 その生きる糧を無くした俺は、これから先何の為に生きていけばいいのかすら分からない。 見つかるだろうか。 蘭花以外の生きる糧を。 俺は見つけられるんだろうか。 こうやって、蘭花の事を考えずに過ごせる日が俺には来るんだろうか。 俺には分からない。
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