【右腕の男】

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俺、今回の事で改めて感じたのは俺の感情って最大限に発揮されるのって全部、蘭花の事なんだ。 嬉しい時も悲しい時も喜ぶ時も辛い時も……。 全部、蘭花なんだ。 つくづく思う。 俺って、蘭花で出来てるんだと。 人生で一番悔しい思いを初めて味わったのも蘭花の事だった。 中学に上がる前の春休み。 俺はいつもの様に翔の家に行き蘭花も入れて皆で遊んでた。 夕方になり家に帰ると一緒に住んでた爺ちゃんが話があるから。と居間に座らされた。 『何だよ。話って。』 爺ちゃんと婆ちゃんが二人で並んでた。 「竜。さっき、お前の父さんから連絡が来てな。あっちが軌道に乗ったから3人で移住して来いって言ってきた。」 俺は意味が分からず聞き返した。 『はっ?どういう意味だ?』 「父さん達がアメリカで企業を大きくするのに成功したんだよ。だから、俺も婆さんもお前もアメリカに移り住めって事だ。お前も中学に上がるから丁度いいからってな。だから、この休みの間にアメリカに行く。」 言っている事が理解出来た俺は叫んで家を飛び出した。 『ふざけんな!!何勝手に決めてんだよ!俺は絶対アメリカなんか行かねぇぞ!!』 そのまま行く宛もなく結局、近くの公園に行った。 ブランコに座り、どうしようもない現実に項垂れた。 ……何の為に蘭花と同じ髪の色にしたと思ってんだ。 2ヶ月位前、学校帰りに一人でベンチに座る蘭花を見つけた。 翔達とは途中で別れた。 家の近くの公園を通ったら、ベンチに一人で座る蘭花を見つけた。 俺は蘭花に駆け寄り話しかけた。 『蘭花。どうした?一人で。まだ家に帰ってなかったのか?』 俺の言葉に返事をしない蘭花。 様子がおかしいと思い、顔を覗き込むと蘭花の目には涙が溢れてた。 『どうしたんだ?!蘭花!何で泣いてるんだ?!』 蘭花の両肩を掴み必死で聞いた。 こんな蘭花の姿を見たのが初めてだったから。 蘭花はしばらく黙っていたが、俺がずっと聞いてくるから少しずつ話をしてくれた。
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