【右腕の男】

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アメリカに行く事は、翔にも蓮兜にも言ってなかった。 勿論、蘭花にも。 言えるはずなかった。 せめて春休み最後の日まで日本に居させてくれと親父に頼んで、何とかそれは聞き入れてもらった。 そして、春休み最終日。 俺は翔と蓮兜を道場に呼び出した。 先に行き広い道場のど真ん中に大の字になって翔と蓮兜を待った。 「竜。どうしたんだ?急に呼び出して。家に上がって来ればいいだろ。」 翔と蓮兜が道場に来た。 大の字に寝ている俺の頭元に立った翔に目をやり言った。 『喧嘩しようぜ。俺と本気で戦ってくれ。蓮兜。お前も。』 そう言って立ち上がった。 「…はっ?何言ってんだ?お前。何だよ。急に。」 『いいから。来いよ。遠慮すんなよ。本気でやる!行くぞ!』 そう言うと共に翔の側頭部目掛けて蹴りを繰り出した。 片腕でガードした翔。 「……本気か?…よく分からねぇがお前がその気なら!!」 翔も殴りかかってきた。 蓮兜も途中で加わって、3人でやり合った。 3人共、血塗れになるまで。 「…ハァハァハァ…何なんだよ…ハァハァ…竜…。」 『…ハァハァ…お前らになら…ハァハァ…任せられる…。』 「…ハァハァ…ハァ…何が?…」 道場のど真ん中に3人で息をきらしながら仰向けに倒れた。 『…蘭花の事だ。お前らになら頼める。』 「……頼めるって」 『…俺さ。アメリカに行かなきゃいけねぇんだ。』 二人は驚き上体を上げ仰向けに寝る俺を見た。
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