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「・・・ぅんッ、ひ・・・・・・ふあッ」
痺れるような感覚が躰を突き抜け、一の口からあられもない嬌声が零れ落ちる。
一気に、頭に血が上った。
「・・・ッ!」
「ほう・・・叉随分と色っぽく啼きやがる。男に感じるなんざ、てめえどうやら『その気』がありそうだな」
愉悦に満ちた声を耳にしたとて身動きすらままならぬ。
精々歳三を睨み付ける事しか出来なかった。
「そう、いきり立つなよ」
歳三の声には余裕がある。
再び、頭の中へ直接声が流れ込んで来た。
「てめえ、人を斬った罪悪感も無え、ましてや後悔なんてこれっぽちもしてねえのによ。ずっと己に取り繕って来たんだろう?『あれは相手が悪かったんだ、俺は悪くない、仕方の無い事だったんだ』ってな」
「・・・・・・ッ」
「本心を隠す為に無関心を装って表情を消し、誰とも口を利かずにいるのは本当の自分自身を誰にも知られたくねえからなんじゃねえのか?」
耳朶に歳三の細い息を感じたと同時に、視界が再び闇に染まる。
「本当は斬りたくて仕方ねえんだろう。自分がどれだけ人を斬れるのか試したくてうずうずしてるんじゃねのか。だからこの道場へ来た。竹刀を振り回すだけの剣じゃねえ、人を斬る『実戦』の剣ってのがどんなものかを知る為にな」
「違う・・・ッ!」
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