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己と真面(マトモ)に打ち合える者など、もう此処にはいないのだ。
・・・・・・其処に慢心が生まれても可笑しくは無い。
加えて、この青年は人一倍自尊心が強かった。
幼くして両親を失った後、姉夫婦に養育され齢九つにしてこの試衛館の内弟子として預けられた境遇が自立心を養った事は想像に難くない。
道場と言う強烈な男社会で揉まれて生きて来た総司にとって、特に初対面の相手に『舐められる』事など有ってはならない事だ。
その性癖故であろうか
この青年は客の応対には全く不向きと言って良かった。
殊に、入門志願者が現れた時などは目も当てられない。
皆が総司を表に出さぬよう非道く気を使った。
「先生は今出稽古に出ていてね。二、三日は帰らない」
「それならば叉、出直して参ります」
ーー不意に
少年らしい澄んだ声音ながら、毅然とした声が響き渡る。
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