眉月(マユヅキ)

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その声は決して大きく無かったが、内に刃を秘めているかの様に冷ややかな鋭さを内包していた。 (何だろう、此奴(コイツ)) 其処で、改めて視線を相手にぶつける。 総司の頭一つ分は低い位置に癖のない蒼みがかった黒髪が揺れていた。 元服前らしく腰に脇差のみを携え、着古してはいるが熨斗(ノシ)のきいた着物を纏っている所から察するに武家の人間らしい。 「何だ、坊やじゃない。此処は君みたいなお坊ちゃんの来る所じゃないよ」 「坊やではありません。父上から一(ハジメ)と言う立派な名前を頂戴致しております」 「屁理屈いうなよ。武家の人間ってのは本当口ばっかり達者で厭になるな」 総司も 実を言えば浪人とはいえ武家の出だ。 だが、そう吐き捨てる様に口にした青年を相手は黙って見上げて来た。 「何?何か言いたい事があるならどうぞ。聞く位ならして上げられるよ」 「・・・・・・それでは」 切れ長だが黒目がちの双眸が総司の貌を捉える。
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