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「後日改めてお伺いする旨(ムネ)、此方の先生にお伝え願えますか。申し遅れましたが私の名は山口一と申します」
総司は一礼した後、再び無表情に己を見上げて来た一を真正面から見据えた。
白いと言うより血の気が薄いと言った方がしっくり来る青白い肌色に、これも端整に過ぎた貌は何か作り物めいて見える。
(陶磁器で出来た雛(ヒイナ)みたいだ)
他人が聞けば、総司自身とさして歳の変わらぬ相手に対するこの感想には失笑を禁じ得ないであろう。
その総司にしてからが繊細な美貌の主である。
棗の形に似た、丸く切れ上がった瞳を細めて総司は口を開いた。
「覚えていたら伝えておくよ、一君」
態と名前で呼びかけた総司に対し、一の表情に変化は無い。
髪と同じ色合いをした瞳は硝子玉の様に無機質で、相変わらず他人を寄せ付けぬ雰囲気を漂わせていた。
恐らく総司より年下の筈だ。
だが、少年らしからぬ一の応対はどうにも居心地が悪く遣り切れない。
・・・・・・早く追い出すに限る、と思い始めた総司の耳に、聞き慣れた声が届いた。
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