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ゆいは何かを思い出したように立ち上がり、すぐに戻ってきた。
「秀一さん…これ…。」
ゆいは手のひらを開いて一つの鍵を俺に見せた。
「…私のアパートの鍵です。」
俺の心臓が跳ねる。
「…俺に?」
ゆいがゆっくり頷いたので、俺は手のひらからそれを静かに手に取った。
「…まだ…一緒には住めませんが、私の心の鍵は部長に預けます。」
「…心の鍵?」
ゆいはそれを説明してくれた。
俺の中にはなんとも言えない感情が広がる。
確かに俺はそんな風には思わずに鍵を渡した。
けれど、今なら思える。
「なら、俺の鍵もそうだと思ってくれていい。後にも先にもあの鍵を渡したいと思ったのはお前だけだ。」
ゆいは俺の言葉に瞳を潤ます。
そんな顔されると…参るな。
俺は話題を変える。
「…今日の夕飯は何だ?」
ゆいは優しく微笑んだ。
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