心の鍵

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この週、忙しさのあまり、時間の惜しい私は社内をほとんど小走りで移動していた。 帰宅も毎日11時近くになり、やっと迎えた金曜日。 朝、出社すると既に池口さんが来ていた。 「池口さん!おはようございます。ご実家の方はもう大丈夫なんですか?」 「ああ。ごめんな。長いこと休んで迷惑かけたね。これ。」 そう言って池口さんが小さな箱を差し出した。 「なんですか?」 「開けてみて。」 箱を開けると、小さなキラッキラの宝石みたいなチョコレートの粒。 「キレー!」 「ひとつ食べてみなよ。」 「いいんですか?」 「無理させちゃったお礼だから。」 私は全て形の違うチョコレートの一つを手に取って口に入れる。 口の中で溶けるのは、私好みの甘すぎないビターな甘さ。 「おいひいでふ。」 私は口に含んだまま池口さんに微笑んだ。
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