心の鍵

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…それはそうと… 「秀一さん、いつもシャツやハンカチ、自分でアイロンしてるんですか?」 「いや。クリーニング。」 部長は即答した。 「え?…クリーニング?え?…毎日ですか?」 …そんなこと、あり得る? 「2、3着になったら出してる。すぐ近くだ。朝出して受け取りは下のフロントで代わりにしてくれる。もう常連だし、値段もだいぶ安くしてくれてるみたいだ。」 …そりゃ、常連になりますよ。 部長って、おじいさんが不動産業で成功したみたな話してたよね…お金持ちだから、そんな発想なのかな? 「秀一さん、これから私が出来る時には私がアイロンしますから、無駄にクリーニング出さないでください。」 「ゆいが?なんでだ?」 「なんでだ?って……とにかく。やります。アイロンやアイロン台って、もしかしてないんですか?」 「あることは。ある。」 そう言って部長はクローゼットの奥からガサガサ箱を出してくる。 箱に入った新品のアイロンだった。 私は部長の前でアイロンの準備をしてシャツにアイロンをかける。 部長は帰って来たままの格好でそれをじっと見ていた。 「…へえ。上手いな。」 「秀一さん。これ。普通です。」 それでもじっと見ながら部長が言う。 「いいな。ゆいのそんな姿。一緒に暮らせたらいつでも見られるのに。」 「…あ。」 私はアイロンを置いて、自分のバッグを取りに行った。
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