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150メートルの距離は5倍スコープつきの72式対人狙撃銃ならば必殺の間合いだった。猛烈に暑い午後だが、夕焼け前で風はべた凪(なぎ)である。
ふたりの兵士は直立したまま、戦闘服を硬直させて倒れた。戦死を示す赤い三角形が巨大な電光掲示板のスコアに点滅する。クニが叫んだ。
「なんだよ、五王財閥のお坊ちゃんといっても、ちょろいもんだな」
敵からはなんの反応もなかった。2名の兵士が射殺されることは想定内のようだ。タツオは嫌な予感がした。五王龍起は明らかに準決勝までと戦い方を変えてきている。
塹壕のなかからおかしな形の台車があらわれた。戦闘には手づくりの武器の持ちこみは認められている。誰も使用したことのないルールだった。塹壕から手が伸びて、戦闘不能になった2名を台車の前面に重ねておいた。
「あいつら死体を盾(たて)にする気だ」
テルがうめくようにいった。硬直した2体の後方では狙撃手が伏射の姿勢をとっている。じりじりと台車の前進が始まった。ジョージが感心していった。
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