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「なるほど。人の命をなんとも思わなければ、人体にもあんな使用法があるんだな」  今度は塹壕の左端で2名が立ちあがった。こちらが撃たずにいると、タツオキが自分で突撃銃の引金を落とした。途切れることのない8連射で兵士の仮想の生命は失われた。台車に載せられた死体の後ろにはまた狙撃兵。その背後には2名の兵士が匍匐(ほふく)前進で、エンジン代わりに台車を押してくる。 「左右に回りこまれたら、まずいことになる」  タツオの本陣から盛んに銃声が響いたが、すでに戦闘不能になった兵士に命中するだけだった。カザンが吐(は)き捨てるようにいった。 「五王はとんでもない作戦を立ててきたな。自分の部下の命を駒(こま)のように捨てて、最大の武器を活(い)かしてきた。むこうの狙撃兵2名はインターハイで表彰台に登れるような名手だ。どうする、タツオ。このままじゃ、やられるぞ」  クニが震えながら叫んだ。
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