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「はい。あの戦闘で左脚のひざから下を切断しましたが、今は故郷の図書館で元気に館長を務めています。この挨拶(あいさつ)は父からの命令です」  戦争があれば、必ず死者と負傷者が生まれる。無傷で勝利できる戦いなど、地上のどこにもなかった。 「逆島中将についてあれこれと不名誉なことをいう連中がいるけれど、タツオさんはそんなことに負けずに立派な進駐官になってください。父はそう申していました。中将を直接知る人間は、みな心から感服していた。進駐官としても、人間としても、ひとりの男としても、あなたのお父上は最高だった。もしタツオさんの指揮下で闘うことになったら、そう伝えるように言づかってきました」  タツオは思わぬ伝言に胸が熱くなった。あの父にも味方がいたのだ。その数は決してすくなくはなかったのかもしれない。クニが五十嵐の肩を抱いていった。
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