第3話

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二日目に入った。 観客の目は、ある二人の戦いに注がれていた。 「どりゃあ!」 ブスッ っと心臓に槍をさしたのは安達佑磨。中1。 佑磨はガタイに恵まれていて、未来の横綱格と称されているが、地域のわんぱく相撲には一回も出場記録が無く、本人は野球をやっている方が楽しいようだ。 もう一人は一見小学生のようにも見えてしまうが立派な中学生である、佐倉文恵。中2。 彼女の持ち味は小さい体ですばしっこく移動し、大きな相手を疲労させてからとどめを刺すという、原始的で、かつ、効率的な戦法をとっている。 「おれ、彼奴等に勝自信無いぞ...」 『大丈夫です。私がついてますから。』 根拠は!その自信は一体何処からくるんだ!...と言おうとした、その時! 「もらったああああああ!」 不意にうしろから雄叫びが上がった。俺はとりあえずしゃがんで前転し、敵の攻撃をかわし、間合いを広げながら相手の顔をにらむ。 「お、お前は....」 「俺は佐倉勇。文恵の兄貴だ。」 勇は、妹と不釣り合いな巨体をしていた。巨大な壁のようだ。 「お前は、文恵の一個上らしいな。」 「そうっす...けど」 「お前のことは文恵から聞いてるぞ!」 佐倉文恵は、特に俺と話したことが有る訳ではない。 委員会も違ければ、部活も違う。何だっておれのことを身内に話す必要が有るんだ? 「こんなひょろ長いやつに文恵を渡すかっ」 「はああああああ?」 人間違えじゃ?「俺、馬渕... 「問答無用!貴様には、死んでもらうっ」 ああ、終わった。意外と生き延びれたんじゃないかな。 「ちょっと!お兄ちゃん!なんでそれを本人に言うかなっ」 激しい血しぶきがあたりに飛び散った。 「なんだあああ?」 そこにいたのは、ほかでもない文恵だった。 「せ、先輩のことは秘密だってあれ程言ったのに///」 それをわざわざ口に出さないでほしい。こっちまで恥ずかしくなってしまう。 「そこでなにやってるんだい?お二人さんっ」 「「ちょ、ウワッ」」 そこにいたのは、あれっ親父!? 「なんでここにいるんだよ!」 どうやら親父は飲み屋に行く途中にここにきたらしい。 「正確には、飲み屋の店内に入ったら、ここに居たんだ。」 よりによって、ここで親父が来るとは。 戦いもいよいよ大詰め。強敵に、俺は勝つことが出来るのか。 『勝ってもらわなきゃ困ります』 この声の主のためにもな。
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