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……この日はすごい大雨だった。
大学はというとすでに夏休みに入っている。
今日は桜さんの車に乗り、ある場所へと向かっていた。
それは結婚したら、二人で暮らすマンションだ。
……“新居”。
と名ばかりの牢獄の中。
これから私は、どうなっていくのだろう?
こんな私でも……月が傍に居てくれていた時はちゃんと酸素を吸っていた気がする。
でも今は、ただの動くマネキンだ。
桜さんの言うとおりに動いて、言うとおりに桜さんだけを愛する人形。
これが本来の私。
月と出会う前の私。
何も知らないで、桜さんとの結婚を夢見ていた私。
……これでいいんだ。
私の人生は、最初からこうなるように決まっていたのだから。
――…
「着いたぞ!」
と言った桜さんは、マンションの地下の駐車場に車を停めた。
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