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――…
それから数十分後、やっと実家に到着。
考えてみたら、タクシーで高速バス乗り場まで移動してバスに乗って、着いたら電車に乗って、徒歩で数十分。
田舎の遠さを改めて実感する。
私の実家は昔風の佇まいだ。
真っ白の塀に屋根の瓦は灰色。
玄関のドアはオレンジ色で、普通の二階建て。
庭もそんなに広くはない。
この一軒家に、今はお母さんが一人で住んでいるのだ。
「ただいまー」
と私は玄関でそう声をかけると、家の中に入った。
月は躊躇うように、玄関で立ち尽くしている。
さっきまで珍しい田舎町に目を輝かせていたのに、今は借りてきた猫状態だ。
急に大人しくなった。
シュンと顔を伏せて、玄関から動こうとしない。
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