駆け落ち

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そういえば、月は着替えを出したのかしら? 荷物は小さなボストンバッグだけしか持って来ていなかったから、明日一緒に必要な物を買いに出かけないとね…… ふふふ、こうしていると、何か新婚夫婦みたいよね。 私はニヤニヤしながら、脱衣所の洗濯機の上にバスタオルを置いた。 この歳になって妄想を膨らませたりして、私は本当にどうかしている。 でもね、10年後も20年後も、傍に居てほしいと思うのはあなただけよ? 私はこんなにも月に溺れてしまっているのね…… ……その時。 「ねぇ優陽……」 突如名前を呼ばれて、焦って身体が麻痺してしまった。 だって月は、お風呂の中なんだもの。 その影がガラスのドアに映っている。 ダメっ! 焦ってはダメ。 普通にしなければっ!! 「何よ?」 私は平静を装ってそう答える。 同時に……必死に高鳴る心臓の鼓動を落ち着かせていた。
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